日航・松尾ファイル 木村良一著 読書感想

日航・松尾ファイル 読書感想

おススメ度★★★★★ JAL123便(JA8119)に興味のある方
おススメ度★★☆☆☆ JAL123便に興味が涌いた方
おススメ度☆☆☆☆☆ JAL123便の事故原因に興味がある方
 本書のタイトルは、正確には
日航・松尾ファイル -日本航空はジャンボ機墜落事故の加害者なのか-
です。(長い!)
 技術的な解説を期待して読むと、残念な読み応えです。

内容

 すごいボリュームですので、これから読む方は心してください。
 タイトルにある「松尾ファイル」は、日航社内で事故原因の調査を担当した最高責任者 松尾芳郎氏が、事故当時の状況や群馬県警の取り調べに際し、取調官への説明資料、および連日の取調後に会社への報告書をまとめたものらしい・・・冒頭に「事故のあるファイル」を「託された」と記載があるが、松尾ファイルが公表されるのは初めてで、本書でもファイルの全容までは記載がない(残念!)。この託されたジャーナリスト木村良一氏が松尾ファイルを読み解いて行くのが本書の内容だ(なので、事故原因究明本ではないので注意)。
 松尾氏は日航の整備畑を突き進まれた方の様で(本書によると)、墜落事故当時は整備本部副本部長。事故原因となるいわゆる尻もち事故のボーイング修理の際は技術部長で、修理を全面的にボーイングにゆだねる決定をしている人物の様である。このため、群馬県警にも睨まれていたようだ。松尾氏の驚嘆すべき技術センスは後述する。
 本書は、松尾ファイルと並行して、事故発生時の状況を振り返り、日航社内の対応を振り返り、ボーイング修理ミスや事故につながる飛行機の与圧についてコメットなど代表的な航空機事故を解説して行く。事件に対する日航の対応、事故調への日航の申し入れがことごとく無視され、そして群馬県警による執拗な取り調べや取調官との交流。最後に、ボーイング側の修理担当者などに聴き取りが出来なかったことに関連して、最後にちょこっと当時の日米の政局に触れている(ロン・ヤス等)。
 (本記事では2024年発刊の第一版について、記事にしています)

目次


はじめに
序章
第一章 機影がレーダーから消えた
 1 ミステリアス
 2 フラッシュ(速報)
 3 異常音
 4 操縦不能
 5 遺書
第二章 隔壁が破れ、垂直尾翼が吹き飛ぶ
 6 飛行機の夢
 7 オペセン
 8 飛行写真
 9 落合証言
 10 生存者たち
第三章 ボーイング社の修理ミスが隔壁を破壊した
 11 毎日の特ダネ
 12 与圧と金属疲労
 13 コメット機の連続事故
 14 セクション41
 15 アメリカの深謀
第四章 なぜ日航はボーイング社を訴えなかったのか
 16 社長の辞任
 17 事故調の報告
 18 裏切り
 19 修理指示書
 20 進言
第五章 事故調は申し入れをことごとく無視した
 21 亀裂の発見確率
 22 事故調の権威
 23 隔壁の改善
 24 エアバス機の事故
 25 油圧の改良
第六章 警察の執拗な取り調べに立ち向かう
 26 群馬県警の追求
 27 強靭さ
 28 修理ミスの理由
 29 不起訴
 30 政権の限界
あとがき

驚嘆すべき技術センス

 松尾氏は、JALの整備・技術畑のスペシャリストで責任者でもある訳だが、事故直後の8月13日付の読売新聞に載った事故機の垂直尾翼が吹き飛んでいる写真を見て、(写真から)圧力隔壁が損壊して垂直尾翼を吹き飛ばすとともに、油圧が4系統すべて失われて操縦不能になったことを推論する。(p67)

落合証言

 陰謀論の片棒を担ぐつもりはないが、生存者の落合さんの証言として、「~機体はかなりひらひらフライトに入り~ややして富士山が左側に見えたので~羽田に戻るものと~10分ほどして酸素がなくなった~」(p71)・・・この記載順(時系列)だと、大月でループする前に富士山が左側に見えた感じになる。
 このメモは、のちに世間から批判を受けることになった聞取り内容で、警察より先に日航幹部が面会謝絶の生存者の落合さんに病院で状況確認した時のメモである。メモなので、ランダム時系列かもしれないが・・・・。

感想

 なんせ凄いボリュームだ。しかも、新聞の垂直尾翼が欠けた写真を見て、隔壁破損から垂直尾翼破損・油圧オールロスを予想する等、事故調の結論を先取りしていてすごい。
 ただ、本書は松尾ファイルを読み解くスタイルで、しかも読者にわかりやすくを意図したのだろう・・・古今新旧の事故を引き合いに出して、時系列が行ったり来たり目まぐるしい。そして、同じ専門用語の解説が何度も出てきて、読みづらいを通り越してうっとしい。雑誌の連載かなんかをまとめたので仕方ないかと思ったら、書下ろしである。できれば、巻末に専門用語解説をつけて、整理して欲しかった。
 最後の方の群馬県警の取調べに関する記述は圧巻だし、松尾氏の技術者としての心情やプライドも読み取れる。殺人担当の取調官の脅しや飴玉に、言葉尻を取られないように、精神を平穏に保ちクレバーな受け答えを継続するのは並大抵のことではないだろう。読んだからと言って、役に立つことはないと思うが勉強になった。

 読み終わって、改めてタイトルを読み直すと、この本が事故原因究明本ではないことがわかる。たぶん力点は、日航がボーイングを訴えることもできたのにやらなかった・・・であろう(タイトル通りに)。日航は諸事情を鑑みボーイングを訴えなかった。ので、世間様から日航が加害者側にカウントされている。

 事故究明本として読み進めると、やや方向が違うような気がするので、これから読まれる方は・・・膨大なボリュームだけに・・・気を付けて読み進めて頂きたい。

カンパニーラジオの内容を公開して欲しい

 公開されているボイスレコーダーの声(これもフェイクとの噂もある。4チャンネル・トラックの部分部分で合成されているらしい)には18:27頃にカンパニーラジオでの通信がされている様子がうかがえるのだが、交信内容は残っていない、カンパニー・ラジオの内容を公開して欲しい・・・JAL関係者のファイルなので・・・ないのかな?
 小生の勝手な憶測だが、カンパニーラジオで会社(JAL)へ状況を伝え、会社技術陣へ対応策(最善策)の回答を依頼していると思う。少なくとも、当時のコクピット内での現況把握内容がわかる。
 

JAL123便墜落事故の謎と、本書の残念なところ

 JAL123便の墜落事故については、大きく2つの点で謎に包まれている。1つは、事故原因そのもの。もう1つは救難活動の遅れ・墜落場所特定ミスである。あと、目撃情報との相違。
 事故原因については、国交省(当時の運輸省)の事故調査委員会(事故調)が調査・推定・報告されている。ご遺族の粘り強い要望・交渉により解説も出されている。調査報告書の内容は本書でも語られている様に、飛行機の後部隔壁が不適切修理により破断・破壊され、キャビン(客室)の与圧された空気が一気に噴き出し、尻尾の部分を吹き飛ばすと共に、一部の吹き出した空気が垂直尾翼にも分流し、その大部分を吹き飛ばしたというものだ。同時に、尾翼についてるエルロン・ラダーと呼ばれる動翼(動く部分)の動きをアシストしている油圧アクチェーター(自動車のパワステ・電動自転車のアシストモーターの様な力強く動かすものに相当・・・ただし油で動く)も大規模に破損し、もしものために4系統(4本に分けてある)の油が全部抜け出てしまったために操縦不能になり、山に激突したというもの。
 ただ、報告書や解説でもわからない旨が言及されているが、パイロットは事故が起きたらすぐ酸素マスクをつけて、空気が薄くなるのを防ぐため、すぐに高度を下げるのが定石なのだが、やっていない・・・高度を下げず(操縦不能だから仕方がないが・・・)、コクピットでは酸素マスクをつけず操縦を諦めずに奮闘、客室でも外に吸い出されもせず、生存者は空気の薄さを自覚していない。気絶もせず遺書を書き残した方もいる。本当に、隔壁からの空気の破裂があって、尾翼・尾部を壊したのだろうか?
 それと、機長も操縦不能と宣言しているが、何とか羽田に戻ろうと旋回し、大月上空では高度を下げる為にくるりとちょうど一回転している。操縦不能だろうか?
 
 松尾氏の卓越した技術センスから、JAL123便事故最大のナゾ・問題点である客室・操縦室の気圧、それと操縦不能についてのしっかりした記述があると良いのだが、本書には残念ながら・・・ない。急減圧がなかった謎については、言及して欲しかった。

 <操縦不能>については、クラッシクな機体なので、小生はある程度操縦できたのではないかと思っている・・・そうでなければ、焼津あたりから羽田の方向に引き返したり、大月上空でピタリと一周できないであろう。すでにその頃からエンジン推力で飛行制御した説もあるが・・・。ただ・・・フライ・バイ・本当のワイヤー(ロッドかもしれない)・・・で、油圧なしにエルロンやエレベータがどの程度操作できたか、はなはだ疑問。・・・松尾ファイルなら、この辺の考察もありそうな気がする(小生の勝手な想像だが)・・・、本書に記載がないのが残念。



 事故原因の不適切修理とされる、しりもち事故の際の隔壁修理の補強版(ダブラー)を、切り分けた問題も、本書ではボーイングが悪いで終わっていて、日航側がボーイングに遠慮(ボーイングに作業を円滑に進めてもらうための配慮)して、日航側の作業立合いを入れなかったのも後悔されている(この遠慮指示の決定は松尾氏との事)までの記述となっている。本書はこの点ももどかしい。本書でも語られている通り、作業員が修理屋さんなら、こんな初歩的なミスはしない。作業員が製造屋さんなら、ポンチ絵(スケッチ)と言えど図面通りにやる(できないなら止まる・・・できないのは作業者のせいではないから、製造屋は平気で止める・・・本書では定規で清書していないのが悪いような書き方がされているが、小生はあまり関係ないと考えている)。だから起こり様がない。ついでに言うと、出来ない図面は書き手が悪い。・・・松尾ファイルなら、この辺の考察もありそうな気がする(小生の勝手な想像だが)・・・、本書に記載がないのが残念。
 本書は、小生のジレンマ解消にはならず。(小生、この文章を書きながらストリンガーのエッジ仕上げ不良のような気もしてきたが・・・とっくに調査済みだろうと思いますが・・・)
 「~航空史上最悪の墜落事故の真相に迫っている。~」っと、本章を紹介している記事もありますが、中曽根さんが隠蔽した様な書きっぷりのものあって(本書の最後の方で中曽根政権に触れられているので結論として読み取ったか?)、ちょっと残念。

 小生のささやかな希望だが、上記も含め、世の中に出ている諸説と対応させる形で松尾ファイルを解説して欲しい(巷ではこんな噂だが、松尾ファイルにはこう書かれいている・・・の様な本)。

関係リンク

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関係外部リンク
 日本航空123便墜落事故 – Wikipedia
  関係するリンクも多数あります。
 日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説
   事故調査報告書へのリンク、およびその解説が貼付けされているページです。

 木村良一 – 徳間書店

 青山透子公式サイト 日航123便墜落の真相
 青山透子 – Wikipedia

 赤城工業株式会社|アクチャル 03
 赤城工業株式会社|アクチャル 04
  救難ヘリの救助員の出動記録(回想)です。
 


 

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