1966年丙午は迷信じゃなかった! ひのえうま~江戸から令和の迷信と日本社会~  吉川 徹 著 読書感想

ひのえうま 丙午 江戸から令和の迷信と日本社会 読書感想

 おススメ度 ★★★★★ ですが、本書意図からすると☆☆☆☆☆
 60年に一度めぐってくる丙午。この年(丙午)だけ、人口が減少するという言い伝えがある。実際、日本では1966年の丙午では、顕著な出生数の減少があった。
 本書は、江戸時代からの丙午の年の出生数減少について、テータを読み解き、真相に迫る。そして、それぞれの丙午の世相や記録・事実を基にして、その丙午の年の出生数減少の真因に迫る。
 本書は、単なる迷信の解説とは一線を画しており、データから真因を探るお手本となる要素も持っている。おそらくは、迷信ではなく、いわれのない差別の形成と衰退。そして、当世まで脈々と伝わる日本人の気質を分析している名著だと思う。
 惜しいのは、本書でも自戒があるが、1966年の出生数減少の主因というかトリガーの1つは、皮肉なことに当時の主力メディアによる60年に1度の迷信否定の拡散(バズり)による迷信の浸透であることから(誰も知らなければおこらないので)、本書も拡散に一役買ってしまうし、本記事せえも一役買ってしまうのではないかと言うジレンマを抱えている。
 ただ、本書の分析によれば、丙午の出生数減少は、1966年が最後だろうと予測している。

本書の内容

 まず、「丙午の女は気性が激しい」の原点として、「八百屋お七」を考察します。
 「八百屋のお七」の一般的な話は、1666年丙午生まれ?のお七が天和の大火で焼け出され、避難した先の寺で出会った人に恋に落ち、再建した実家に戻ったものの、恋人に会いたいがために実家に火をつけ、捕まって火炙りにされるストーリー。お七は井原西鶴などの数々の劇で演じられ庶民に知れ渡ります。
 次に、江戸時代の丙午の変遷を、人口の推移や川柳などの書物から読み解きます。徐々に、定説として根付いて行きます。
 明治の丙午1906年は意外にも、人口減少は見られず、やや出生数が減少するものの、その数ほど減少していないかったのではないかと読み解いて行きます。ただ、この明治生まれの丙午の女性は、モダンガール世代なのですが、迷信の被害者となってゆきます。江戸時代と違い、被害者である明治の女性は、次の昭和の丙午まで生き延びて行きます。
 昭和の丙午1966年の数年前から、丙午の迷信についての新聞記事や雑誌記事が組まれはじめ、かえって人々の迷信を呼び起こします。また、迷信だけでなく、子供を産む親世代が明治生まれの丙午の女性の不利益を直接見聞きすることが出来た事、そして、このころに家族計画が一部定着・実践できたことから、出生減に至った事を読み解いて行きます。
 さて、昭和の丙午の女性にスポットを当て、迷信が本当かどうかを読み解きます。そして、迷信に過ぎず、また時代の後押し(男女機会均等法の制定、バブル世代)があり、丙午の女性は活躍されていることから、また、令和に出生減はなく、また迷信は復活しないと予想します。

小生の感想

 丁寧に記録を発掘して、分析する手法は、小気味よく展開されて行きます。気持ちいいくらいです。
 昭和の丙午の人口減について、前後に人口増が発生していること、また丙午は受験に有利と言われることなどを丁寧に真偽を確かめて行きます。

 小生の意見の相違は、統計上の大勢に影響は落とさないだろうけども、昭和の丙午に対しても家族計画以外での人口減はあったろうと推測します(そんな時代であったかと・・・)。また、明治生まれの小生の祖母が、丙午の女性を嫌っていたことを知っているので、著者の分析以上に丙午の女性はご苦労をされていただろうと推測します。
 しかし、著者が予想している通り、現在は丙午自体に知名度はなく、江戸時代の飢饉の時代や明治同様に出生減はないだろうと思います。丙午に生まれた女性が差別なく生活している様子を静かに眺めたいと思っています。
 いわれのない差別と一緒で、皆が生きやすい様に差別解消され、本書のような記録・歴史だけが残るのではないかと思います。

 また、日本社会特有の現象ですが、台湾は長く日本の一部だったことから、影響があるのではないかと思い、ちょっと調べてみましたが、1906年も1966年も出生数の変化は特にないようです。やはり日本特有の現象の様です。

 丙午の<現象>に興味のある方はもちろん、歴史からデータをどう取り出して分析し行くかに興味がある方にもおすすめの一冊です(ジレンマですが、本書がベストセラーになり、昭和同様にならないことを、ひそかに念じております)。

本よみうり堂で福間 良明さんに紹介されました。

関係リンク

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関係外部リンク
 吉川徹 (社会学者) – Wikipedia
 
 干支 – Wikipedia
 丙午 – Wikipedia
 八百屋お七 – Wikipedia

 『ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会』吉川徹著 : 読売新聞
  福間良明 – Wikipedia

 中華民国の人口統計 – Wikipedia ・・・ ちょうど、1906年から始まっています。

 ピグマリオン効果 – Wikipedia 
    ・・・ 丙午の女性にはありませんが、期待されるとその様になるといった効果です。

 

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