JAL123便事故 安全工学の視点から検証する 寺田 博之 著 読書感想(再読)

JAL123便事故 安全工学の視点から検証する 寺田博之著 読書感想 読書感想

 お亡くなりになられた被害者、関係者のご冥福をお祈り申し上げます。

おススメ度★☆☆☆☆(一般の方|読書好きの方)
おススメ度★★★☆☆(JAL123便事故事件に興味のある方)
 JAL123便事故に関して、破壊力学・破壊工学・航空機の専門家の著者の視点から事故内容や事故調査報告書を検証・解説する一冊。薄くて字が大きくて読みやすい。表紙の写真が、壊れてつなぎ合わせた圧力隔壁の写真が正面から捉えられていて、真正面から向き合っている本書のポジションを現わしている(どちらかと言うと、全面的に事故調査報告書の内容を支持しており、疑惑本に立ち向かっている姿勢の内容である)。
 本書は、2010年7月に初版が発行されており、新書は入手できそうもない。先般の小田周二さんや青山さんの戦闘機による並走説を読んで、思い出して再読した。
 本書では、JAL123便事故で得た教訓を紹介すると共に、JAL123便は、随伴機がいれば機体の損傷状況も判明してコクピット内で状況が理解でき、対策もとれたであろうし、JAL123便事故の後に同様に油圧を全部損失し不時着したUA232便(DC-10)の事故対応と比較して、羽田に戻る決断をせず近隣の飛行場に向かうべきだったのではないかと紹介している。

本書の大まかな内容

 著者は、航空宇宙技術研究所でSTOL実験機「飛鳥(あすか)」の開発に携わった経験がある研究者。飛行実験の関係で防衛庁(現在の防衛省)と調整を行った経験もある。また、JAL123便事故後に破壊力学の視点から研究発表も行っている。

第一章 事故と原因調査

 第一章では、事故と原因調査として、ほぼ事故調査報告書に沿った経路や原因をわかりやすく解説し、他に挙げられている諸説を解説し一蹴している。また、機長は、R5ドアの損壊により急減圧したと判断したろうと推測している。実際は油圧が減少し機体の制御が出来なくなっていたにも関わらず機内の情報からでは知る由もない・・・まじかに支援機や随伴機がいればアドバイスが得られるのに・・・っと残念がっている。
 また、こぼれ話として、実験機 飛鳥の調整で知り合った自衛隊高官との会話で、JAL123便の高濱機長の出身の海上自衛隊(海自)と航空自衛隊(空自)の違いを教えられたとして、海自はベースが船舶なので基本的に<自力で帰還>させようとして困難に立ち向かうのに対して、空自は<みんなの支援によって飛ばされている>との認識を持っているため、すぐ支援を要請する習慣が身についている。この辺の無意識の意識が、スクランブル戦闘機などの飛行支援を要請しなかった理由かも・・・っと無意識意識を推定している。32分間飛び続けられたのはフェール・セーフ構造で設計・製造された飛行機だからと推論している。
 また(小生はたぶんイヤミだと思うが)、国土交通大臣が安全確認がされるまでは型式証明の一時停止を行う。(つまり同型機・・・この場合、世界中の747 ジャンボジェット・・・少なくとも日本の747をいったん飛行停止にして原因調査して安全が確認されれば、飛行停止解除する)。
 (この飛行停止を懸念してか、)アメリカの国家安全運輸協会(NTSB)がものすごい早急さでJA8119について製造会社が一括管理する情報を分析して日本側に情報を提供してきた経緯を紹介している(著者も間に挟まったらしい)。

第2章 圧力隔壁破壊の科学

 修理ミスの謎として、問題のスプライス・プレートがどのように修理の際に施工され、それが破壊力学的にどのように進展するのか解説している。事故原因のスイス・チーズ・モデルやら、修理が施工された後では不適切工事を確認できない様子や、金属疲労や悲劇のカウント・ダウンとしてどのように破壊が進展したかを推定解説している。

第3章日航機事故の経験を活かす

 事故調査委員会の勧告を解説している(垂直尾翼の箱型構造に蓋をするなど)。
 また、飛行機の疲労破壊試験について解説して、ダンエア航空B-707の墜落事故の一部を強化したら予想外のことが起きた(バランスが大事)などを紹介している。

第4章 類似事故と安全性の向上

 類似事故として、
・コメット機の墜落事故(開発時の実証試験で、最初に力をかけて加速試験(早く壊れる)様にしたつもりが、疲労破壊的には長寿命にしてしまった失敗など)、
・1974年のトルコ航空機墜落事故(最初の事故でドア・ロック機構の設計不良が判明した後も、人命が失われるような重大事故ではなかったのでFAAが軽い処置で済ませたために、人命を失う第二の事故が起きてしまった)
・有名なアロハ航空機事故(機体の天井が吹き飛んだ事故)。2つ事故原因が紹介されており、1つは設計時の接着剤の選定ミス。第二は整備不良と言うか、故意の定期整備飛ばし・・・で起きた。
・最後はUA232便の油圧全損、緊急着陸事故。JAL123便のエンジンによるコントロールが活かされて不時着した案件であるが、最寄りの空港に一刻も早く着陸したことも、成功要因としている。

 UA232便の事故原因として、非破壊検査の処理不良が挙げられ、検査結果の見逃しや検査後の検査液の除去不良などを紹介している(蛇足だが、たぶんこの検査液はブラックライトで傷がピカっと光る奴だと思うが青白いと書いてあるので違うかもしれない(普通は黄色。暗闇で目立つので)。ピカっと光る液はそのままにすると錆びやすいので検査後はきれいに洗うもが決まりだがUA232では現れていなかったらしい)。

あとがきに、非破壊検査の権威?である谷村康行先生に「~航空機に関わる構造材料屋として事故の顛末を纏め上げる社会的責任があるのでは?」っと勧められて本書を記載したとある。

小生の感想

 本書を読んでいて、加藤寛一郎先生の<航空の専門家は飛行機を知らない>との名言(迷言?)を思い出した。これだけの専門家なので、本当はもっと書きたいことがあったのではないかと思う・・・実際、JAL123便事故について、いろいろ発表されている様だ。
 ただ、小生が聞きたいのは(毎度申し訳ないが、素人の揚げ足取りだが・・・)、
・気圧が急減圧したのに急減圧訓練を受けているパイロット達が酸素マスクをつけなかったのは何故か?しかも、気圧確保のために(それは機体の分解を防ぐ行為でもある)急降下を試していない・・・
・そのくせ大月上空ではくるりと輪を書きながら高度を下げている・・・本当に操縦不能なのか?
・FEが、油圧オールロスと言っているらしいが・・・?
・尾部の集中油圧制御部が吹き飛んだと解説されているが、操縦桿や操縦輪、ラダーペダルへのフィードバックは?操縦索やロッドが吹き飛べば、スカンスカンでは?FDRから、ラダーペダルは左へ~向きっぱなしで、よくわからないが、CVRから操縦桿などは力入れて動かしているようであるが・・・?コクピットの状況分析結果は如何ほどか?

 本書を読んでいて、最大の疑問は、日本の航空局が747を事故直後に飛行停止にしなかった点・・・に尽きる。たぶん、飛行停止にしていたら、国家で隠匿なんて疑惑はかなり引っ込んだのではないか?(つまり、航空局は事故直後から本当の事故原因を秘密裏に知っていたので、他の747の飛行は問題ないと判断できた!との疑念の始まり・・・)。笑い話の聞き伝えではあるが、日本はなんかあったら事故原因判明と対策完了まで飛行停止、アメリカはなんかあっても事故原因がわかるまで飛行停止にしない・・・っと、笑い話に聞いた。

 本書を再読して、本当にびっくりしたのは、NDI Japanの谷村康行先生が登場したことだ。以前読んだときは読み飛ばしていたらしい。谷村康行先生は、非破壊ブログ界隈では有名だった方で、専門の航空機や非破壊検査から、お風呂場の腐食の話やブラタモリで紹介された場所、そしてAKB48の喫茶店まで話題にされていた方(同行した方のブログだったかな?)。小生、ほんのちょっと、非破壊検査職場の事務をやっていたことがあり、勉強(息抜き?)で読ませて頂いていた(小生自体は非破壊検査の先生に「キミ弱視で非破壊ムリ」と言われてあきらめたが・・・)。谷村先生は、すでに鬼籍に入られており残念だ・・・(こんな細いつながりだが)本書に運命的なものを感じた瞬間であった・・・谷村先生のブログ「かたちのココロ」はもう閉鎖されている模様・・・ニンテンドー・ゲーム機のWiiリモコンを使った加速度測定も先生のブログだったと思う。残念。

関係リンク

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関係外部リンク
 日本航空123便墜落事故 – Wikipedia
  関係するリンクも多数あります。
 日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説
  事故調査報告書へのリンク、およびその解説が貼付けされているページです。
  操縦輪やラダーペダルの動きは、報告書297~298頁 DFDR図-2 10.別添2~別添5(一部)
  エンジンの操作記録(出力記録)は、報告書の301~302頁で、DFDR図-4 です。

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  著作 

 青山透子公式サイト 日航123便墜落の真相
 青山透子 – Wikipedia ・・・ 青山さんが誤りがあると怒っていますが・・・

 佐藤まさひさ – Official Site
  フェイク情報から自衛隊の名誉を守る! | 佐藤正久オフィシャルブログ「守るべき人がいる」Powered by Ameba
 佐藤正久 – Wikipedia

 赤城工業株式会社|アクチャル 03
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  救難ヘリの救助員の出動記録(回想)です。
 
 日航機墜落 事故調査官 100ページの手記に書かれていたこと|NHK事件記者取材note

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  プロフィール – ndijapan ページ! 谷村さんのプロフィール
   ブログ 「かたちのココロ」 ←リンク切れです

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