(事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたします)
本書おススメ度:
JAL123便に興味のある方
★★★★★
青山透子さんの本をこれから読もうと思っている方
★★★★★
青山透子さんの本を読まれた方
★★★★★
JAL123便墜落事故の原因を知りたい方
★★★★☆(ちょっと物足りないです)
JAL123便(JA8119)墜落事故事件に関する青山透子さんの仮説「撃墜説」を狙い撃ちして、矛盾点などを解き明かして行く。海上自衛隊を冠した著書で重みがある(「永遠に許されざる者」等と違い、本に重量があるわけではないが・・・)。
「はじめに」と、最後の「謝辞」に本書を執筆した動機が明記されている。「はじめに」は大変わかりやすく、30年前の放火事件犯の逮捕になぞらえている。30年前の放火事件の犯人として捕まえられそうになった人が逮捕に来た人に尋ねる・・・なぜ、私が犯人なのかと・・・それは、あなたが当日に赤い服を着ていたから・・・。
青山透子さんの著書をお読みになった方は、これだけで本書を最後まで読む気になるだろう。赤い服・・・。
本書は、本当に丹念に「海上自衛隊ミサイル撃墜説」「2020年青山説」「2025年青山説」の矛盾点を解き明かして行く。
本書の執筆は、海上自衛隊で、飛行訓練を受け飛行機を飛ばし、第二航空群司令・・・海上幕僚副長・・・などを歴任した真殿智彦(まどのともひこ)さんが、海上自衛隊はもとより、航空自衛隊、陸上自衛隊の関係方々の協力を得て執筆されています。
たいへん読みやすく、クドさや、もの難しさのない、読み進めやすい文体・構成です。青山透子さんの時々の主張をちゃんと引用しているので、読み比べる必要がなく、その点でも良著かと思います。ざっくり知りたい方は、こちらだけ読めば青山さんの主張も網羅されています。
本書の内容(目次抜粋)
第1章 日航123便墜落事故とは何だったか
第2章 青山透子氏の「撃墜説」はどのようなものか
第3章 「海上自衛隊ミサイル撃墜説」疑惑のはじまり
第4章 護衛艦まつゆきはどこでなにをしていたのか
第5章 「存在しないミサイル」の波紋
第6章 「日航123便機内写真」の新事実
第7章 「海上自衛隊ミサイル撃墜説」を覆す
第8章 事故から40年、驚くべき新説の登場
第9章 事故原因の真相
終章 拡散する陰謀論に抗う
青山透子氏の主張と本書主張の比較
謝辞
参考・引用文献
(目次だけで、小生はうれしくなっちゃいますが・・・術中にハマっている?)
圧巻の写真分析
圧巻は、事故にあわれて亡くなられた小川 哲さんが機内から窓越しに外を移された写真の解析です。写真の中ほどに黒い点が写っており、青山さん他の方々が、拡大するとオレンジ色が見えるので、標的機だったり、<練習用>のミサイルではないかと疑っているものです。
真殿さん自身も、この写真を自身の厚木などでの飛行経験から解き明かすのだが、それ以上に、分析を依頼した知人の写真家K氏が凄まじい。
真殿さんも木更津上空で南に飛んでいる際に西向きで撮った写真であることを分析している(写っている島は江ノ島で、奥に見えるのが富士山。写っている雲がその後重要になるが・・・その前に)。写真家K氏は、Google Earthを使って、写真の風景を再現する。
K氏は、プロらしく写真機の特定、ボケ具合の特定、色味の分析などから、黒い点が極めて至近距離であることを突き止めて行く。そして、被写体のブレ具合から、機内の何かが窓に写り込んだとして、再現写真まで撮っている(高速移動体ならシャッター時間の間に移動するので斜め線などで写る)。
非常に残念なのは、拡大分析をやらなかったこと・・・すでに意味はないだろうが・・・JAL123の真相究明をされている方は、青山さんが唱えるより、かなり早い段階(90年代?)でこの写真を引き伸ばすとオレンジ色が見えることを発見して、いろいろと推定している(書籍名と作者名を失念・・・すみません)。限界以上引き延ばせば色化けすることは十分考えられるが、せっかくならこの辺も分析してほしかった。
小生がちょっと残念だと思う点
事故の真相
本書では、事故原因の推定を一章かけて論じていますが、ちょっと少ないのが残念です(本書の趣旨からはちょっと外れるので仕方ないですが・・・)
真殿さんは、垂直尾翼先行破壊説を考えており、客室減圧については脚センサー誤作動によるバルブの短時間開閉により一瞬だけ客室減圧が起こったとの推定です。P-3C哨戒機での実例を取り上げています。・・・ただ、FDRやCVRとちょっと矛盾しそうです。
海自の限界飛行訓練
小生が勝手に期待していて、書かれてなかったのはダメコンです。ダメコンとは、ダメージ・コントロールとかの略で、船で有名なのは、事故で片方に浸水して傾いてしまった時に逆側にワザと水を進水させて水平に戻す、少しでも正常な状態に近づけるコントロール術です。
123便が後世に残した技として、エンジン推力による飛行術があります。舵がすべて利かなくなった123便を左右のエンジンの推力を増減することにより、昇降や左右にコントロールしたことで、これは後に同じ様にすべての舵のコントロールを失った飛行機で応用されています。この飛行術を被災中に発明したと高濱機長が絶賛されているのですが・・・
しかし、このコントロール術は「壊れた尾翼 日航ジャンボ機墜落の真実」文庫版補章(p356)から加藤寛一郎先生が分析されているように、フラフラ・くねくね・グルんグルンしか飛べないようで、できる!っと信じて操作できなければ、とてもできたものではないようです。
ダメコンが日常の海自の訓練なら、そんな舵がすべて利かなくなった時の操作方法の特訓もやられているか(自慢話を)、小生は密かに期待していたのですが、言及はありませんでした。
本書では、軽めにエンジンでコントロールしたと記載されています・・・が、どの辺からエンジン・コントロールされたか分析が欲しかったです。
ちなみに、データレコーダのエンジンの左右差はかなり最初から記録されており、事故機が最初からまっすぐ飛べなかったとの裏付けになりそうです・・・なので、逆に大月上空でくるりと回れた(特に、そのあとまっすぐに戻った)のが、謎なのです。調査委員の方は、かなり後のほう(埼玉県に入ったくらい)で(F/Eがエンジンコントロールを申し出たくらいかな?)から、エンジンコントロール操舵を始めたのではないかと言われています。
青山さんの分析
彼を知り己を知れば百戦危うからず(孫子)ですが、もうちょっと青山さんの分析も紙面をさいて欲しい気がします。
小田周二さん説への反証
できれば、ベストセラーの青山さんではなく、国会で取り上げられた(青山さんと誤解されたところがある/青山説のバックボーンになっている)小田さん仮説への反証も期待したいところです。
科学の違い
本書は、本当に丹念に「海上自衛隊ミサイル撃墜説」「2020年青山説」「2025年青山説」の矛盾点を解き明かして行く。
ただ、ちょっと忘れているような気がする。青山透子さんは<事故の真相を追い求めている>のだ。小生、人文科学?の追求手段を学んだことがないので、少々理解に苦しむことはあるのだが・・・。いつか、青山先生に先生の科学の追究手法を紙面を割いてもらいたいと密かに願っております。
そして、小生は小学校からの友人の一言を思い出す「これはさ、昨日考えたんだけど、こういう風に違うんだよ」「じゃあさぁ、こういうのは?」「へっ・・・?」(時に人に何と言われようと真理追及を行ってゆく)
ファントムでもマッハ2は出さない
・・・出るんでしょ
この場所では打たないんだよ
・・・打てるの・打てないの?移動中にやられたらどうするの?
そこには行ってないって
・・・こっそり行ったんだよ。見つからない様に。
東京にいたって言ってる人いるよ
・・・目撃者は当てにならないって
そんなのないって
・・・だから、試しに作ってるんだって
だから一緒にいたのは見間違いだって
・・・他の人は一緒には見えないって言ってるよ
ぴゅーぴゅーって?
・・・みんな飛ばしてたって言ってるよ
引き継いだんだって
・・・一緒にやればいいじゃん
ガソリンが足りない
・・・みんなで運べば?・・・※下記
ここ間違ってるよ
・・・じゃあさ・・・
う~ん
追記 ※:現実的には不可能なレベルです。2020年説では、一晩中機体周りを燃やし続けるには、数百セットの火炎放射器が必要になり、燃料を数分おき?に補給する必要があり、膨大な燃料が必要になる。しかも、ゲル化して噴射するので一晩以上安定化のために寝かせる必要がある・・・らしい。当初の説では、準備して待ち構えたところに撃墜させたことになっていた。その後、ご遺体だけ焼くように変更されている様である。
本書の目的は、ほとんど言いがかりがついた冤罪を晴らすようなもので、非常に困難な目的で、ここまで反証をそろえたのは脱帽する。
補足 本書で足りない時代背景
本書でもところどころ触れられている時代背景だが、特に墜落後の救難が朝になってしまった件について、小生から時代背景の補足を入れたい(以下は、小生の勝手な考えということを明記しておきます)。この救難遅延が問題視されているのも事実だ。
GPSとTACAN
テクノロジーについては、本書でもちょっと触れられている。1985年という時代は、今につながるものが黎明期だった時代だった。今では当たり前になって考えられないが、当時はGPSがほぼ普及していなかった(このあと、画期的なカーナビが試作され、湾岸戦争で全面的にGPSが民間開放されて実用化・定着する)。当時は、飛行機はTACANなど電波灯台のようなもので位置を測っていた。これは、走る船の上から灯台を2つ見つけて、あっちの灯台は北から何度の方向、こっちの何十キロ先の灯台は南南西190°とか方角を測定して、紙の地図の上で灯台から線を引いて線が交差したところが自分の位置・・・と確かめるようなものだ。下手すると、100km以上離れた灯台から地図上に線を引く。だから、速報値から数キロずれているのはあたりまえ。
山の中の県境
そして、ここが山の中の県境だった事が、さらに混乱に拍車をかける。長野県と群馬県の県境だったために、数キロずれて長野県側と発表されれば、山をぐるっと回って長野県側からアクセスしなければならない。実際、被災者家族を乗せたバスは長野県側に最初向かっている。
警察同士・消防同士の県境を越えた分断
そして、県境は警察・消防の連携を分断する。今でも、県警など県単位で、無線などの割り当ても県単位なので、現場と県を越えて違う県の本部とやり取りをすることはまずない。当時は訓練なども、山岳救助や高速のパトカーなど限定的だったのではないか?翌朝に、警察としては長野県警が群馬に越境して一番乗りを果たすが、ある意味画期的である。
自衛隊と警察・消防の連携不良
そして、自衛隊と警察消防との連携である。当時は、今以上に自衛隊の憲法論争などがあって、自治体の避難訓練などに自衛隊が呼ばれず、連携して訓練することはなかった。なので、ばらばらに動いた(連携不良で有名なのは、函館空港に亡命着陸したミグ25の時だ。いち早く事件化した警察はミグの周りを立入禁止の規制を行い、自衛隊を近づけなかった。この夜、ソ連軍が飛行機を取り返しに来ると噂になったが、警察の機動隊が警棒と盾で対応する・・・と、噂になった・・・これはあくまでうわさ話です)。
自衛隊にトランシーバー・電話が(たり)ない
輪をかけて自衛隊の電話不足がある。ずっと後の話だが、自衛隊の中で無線機や電話が不足していて、演習に営業職の予備自衛官が参加すると、営業職なので携帯電話を持っているからと通信兵に指名されて、営業携帯電話で連絡を取り合ったなんて笑い話が本当のことのようにささやかれ、このことから日本にソ連軍が攻めてきたら、真っ先にNTTの基地局と本局を攻撃すると言われていた(笑い話です)。でも本当に、NTTの基地局は、なぜか自衛隊基地の近くにあった(お得意さんだった?近すぎて電波障害があって話題になったりした)・・・と言われている。
そんな背景が影響したかわからないが、夜間に上空のヘリから地上部隊を誘導するように指示があったが失敗に終わったようだ(急遽集められたので営業職の予備自衛官はいなかった?)。
ついでに今以上に携帯の基地局はなく、山の中では携帯の電波が届かない(トランシーバーなども同様です)・・・携帯電話もショルダーホンなど巨大なものしかなかった。
お盆休みの渋滞は半端ない
そして、世間はお盆休みで高速道路は渋滞・・・今より激しい渋滞だった。当時はお盆の渋滞は連続100kmも珍しい物ではなく、現場に近寄るのも、帰省先から官邸に戻るのも時間がかかった。
合同対策本部
これらを統合運用すべき合同対策本部もうまく機能しなかったようだ・・・初めてづくしだった。・・・この失敗は、当時の統括指揮しなければならなかった中曽根首相が恨まれている原因にもなっている。この失敗は、初めてのせいではなく、夏休みで官邸に人が誰もいなかったから・・・とのうわさもある。
暗視装置・ナイトビジョン・米軍
あと、暗視装置の普及がある。東北の震災では自衛隊ヘリからの暗視装置での地上映像が流れたが、当時は自衛隊は装備していなかった。米軍は一部で装備されていたようで、これが米軍ヘリが引き返したのが非常に残念との声になっている。ただ、引き返したヘリに搭載されていたかは不明である。早く到着したので、まだ周辺が薄暗く暗視装置なしでも周辺に降りられたのではないか?とも想像されているが、本当のところはわからない。ただ、米軍兵士が周辺に降りればヘリと交信できる無線機(トランシーバー)は持っていたであろう。やっぱり残念ではある。
しまった、紹介する本の内容より時代背景の補足が長くなってしまった。この辺で。
この事故のあと反省され、いろいろなものが改善されて、今日に至っている事は付記しておく。
関係リンク
本ブログの関係記事です。
→JAL123関連|「目撃者たちの証言をもとにした長編ノンフィクション」第一段を読む・・・と
JAL123関連|「目撃者たちの証言をもとにした長編ノンフィクション」第2章「スクランブル編」第一段~を読む・・・・・・有料部分もちょっとだけ
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旅路 真実を求めて [8.12連絡会]21年のあゆみ 1985-2006 読書感想
関係外部リンク
日本航空123便墜落事故 – Wikipedia
関係するリンクも多数あります。
日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説
事故調査報告書へのリンク、およびその解説が貼付けされているページです。
公式ブログ青山透子&吉備素子&真相究明の仲間たち
青山透子 – Wikipedia
赤城工業株式会社|アクチャル 03
赤城工業株式会社|アクチャル 04
救難ヘリの救助員の出動記録(回想)です。
日航機墜落 事故調査官 100ページの手記に書かれていたこと|NHK事件記者取材note
【日航機墜落事故195】まさかの検証。インタビューで明らかになる真殿氏の証言#青山透子#真殿知彦#jal123#日航機墜落事故
【日航機墜落事故182】【後編】35代陸上幕僚長が全てを語る。
2026/6/6 ※追記|火炎放射器関連は、ほぼ実現が非常に困難である旨を追記しました。

