1998年~1999年に連載され、2000年に刊行された「改善のススメ」。主に、太平洋戦争の日本軍を現代からから見て、一見馬鹿馬鹿しい失敗事例などを挙げて、改善事例のヒントを示した三野 正洋さんの名著だが、現在ではなかなか手に入り辛いらしい。
いつもの当ブログなら、一冊の書評で一記事なのだが、折角、楽しい?内容なのでエピソードごとにご紹介したい。今回は「ヒューマンファクターの大きさ 大和・武蔵・信濃の抗堪性」です。乗組員の訓練によって如何に結果が異なるか?どんなにシステマティックにやっても、結局は人・人財なのだ・・・というお話ですが、最後に小生の反論をちょっとだけ・・・
戦艦 大和・武蔵、空母 武蔵
戦艦 大和は、説明する必要がないくらい有名な第二次世界大戦当時の日本の戦艦だ(その後、宇宙戦艦ヤマトとして空を飛ぶ方でご存じの方も多いかもしれないですね)。
当時も今も、アメリカの空母を除いて、最大級の戦闘艦です。世界最大の戦艦と書けないのは、アメリカのアイオワ級戦艦が全長270m、速度31ノットと大和を上回るためです。ドイツのビスマルクもよく比較対象になります。それでも、兵装・防御力・排水量(重量)などで世界最大。特に46センチ砲は射程距離40km以上と射程距離が長く、命中精度を無視すれば、戦艦対戦艦の砲撃戦を想定すれば向かうところ敵なしでした(ただし、レーダーなし(つまり砲弾が接近している間に避けない)の条件です)。
主な諸元は
全長:263m
全幅:38.9m
基準排水量:64000トン
最大速度:27ノット
主砲:46センチ 9門
二番艦が武蔵。
三番館が信濃の筈でしたが、建造途中で航空母艦に変更されています。
抗堪性とヒューマンファクター
さて、本書では、武蔵と信濃の抗堪性を比較する。
武蔵は、魚雷20本、爆弾17発を直撃し、まだ静かに直進しながら、爆発も起こさず沈んでいった。これは、設計・製造も優秀ながら、乗組員が被弾した際に適切な対応を行っていたからに他ならない。被弾し浸水した際は、速やかにその区画の防水ハッチを閉めて浸水を防がねばならない。そして船が傾きだしたら、逆側にうまく注水して傾きを取り戻す。これには優秀な乗組員が、日頃から訓練され、戦闘の場においても素早く対応しなければ実現しない。
ちなみに、ヨーロッパ戦線などでイギリス、ドイツの戦艦を見ても、魚雷7~8発で沈んでいる。
この魚雷と爆弾の数量に攻撃したアメリカ軍は驚き、分析・対策として大和を攻撃する際は、片側に攻撃を集中する作戦を取った。それでも大和は、魚雷11本、爆弾10発の直撃により沈没している。
対照的なのが信濃だ。魚雷4発で沈んでいる。
これは、構造上あまり変わりがなかったが、乗組員の差が歴然だった。
信濃の乗組員は、初めて船に乗るような人が半分以上だったのだ。これでは、魚雷を受けた後、右往左往して、どのような処置を取ったらよいかわからないまま沈んでいったのではないか?このため、超巨大空母の浸水は止まらず転覆し、多くの犠牲者を出した。
教訓 巨大な機械を支えるヒューマンファクター
「
(1)いかにコンピューター化、メカニズムの巨大化が進もうと、人間的要素がこれに大きくかかわってくることは否定できない。
(2)組織、企業にとって、当事者関係者の訓練は極めて重要である。それをないがしろにすると莫大な損失を生ずる可能性が大きくなる。
」
小生の意見
さて、まずはじめに、間違いは訂正する必要がある。
信濃に関しては、どの本で読んだか見つからないのだが、戦艦大和を作った呉海軍工廠の西島亮二技術大佐によると、信濃は横須賀で作っていたが、船体が完成したところで横須賀ではドック不足・人員不足などで艤装や船内防水設備設置などが進まなくなり、相談され呉で作業を引き継ぐことになった。このため、回送のため横須賀から呉へ出発した。敵に見つからない様に夜間に航行したが、潜水艦に見つけられ魚雷が命中し沈没した・・・との事。つまり、防水ハッチなどがまだキチンと取り付けられておらず、まだ作業中で配管配線が縦横無尽に置かれ、ハッチを閉めるに閉められなかったともいわれている。本書で語られる有能な人材の活躍場所はなかったことになる。
子供のころ読んだ話では、魚雷が当たっても気付かずに航行を続けて転覆したとの話もあったが、どうも違いそうだ。
当たった魚雷も2本から6本まで諸説あるらしい。
沈没後の生存者の沈没秘匿の為の監禁なども、悲惨な出来事として伝わっている。
さて、本題に戻って、ヒューマンファクターという単語も、現在ではちょっと意味合いの違う使い方になっているように思うが、優秀な人財が適材適所に配置され、遺憾なく力を発揮できるような環境を整えることは非常に重要である。当たり前だが、なかなかできない。
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三野正洋 – Wikipedia
三野正洋 | 著者プロフィール | 新潮社
改善 – Wikipedia
大和 (戦艦) – Wikipedia
武蔵 (戦艦) – Wikipedia
信濃 (空母) – Wikipedia
ビスマルク (戦艦) – Wikipedia
アイオワ (戦艦) – Wikipedia
呉海軍工廠 – Wikipedia
横須賀海軍工廠 – Wikipedia

